人生の最期まで「その人らしく」生きるために
- ブログ管理人

- 10月6日
- 読了時間: 2分
看護部から「人生最期の瞬間までその人らしく生きてほしい」
というテーマでお話しします。
「その人らしく」という言葉、どこか在宅医療を象徴するフレーズに思えませんか?
支援の方向性に迷った時、私は必ずこの言葉を思い出します。
ただ、実際に実践するのは決して簡単ではありません。
Aさんとの出会い
昨年12月、がん末期と診断されたAさんが自宅に退院してきました。
独居で、腫瘍は増大傾向。痛みも強く、ペインコントロールが必要な状態です。
病院やご家族は施設入所を検討していましたが、Aさんは「どうしても自宅に帰りたい」と強く希望され、自宅療養が始まりました。
専業主婦だったAさんには、生活の一つひとつに強いこだわりがありました。
定期巡回のヘルパーさんも、できる限り以前の生活スタイルを大切にサポートしてくれていました。
しかし、次第に痛みは強くなり、一人でトイレに行くのも難しくなりました。
時にはベッド脇で座り込んでいたり、納戸に迷い込んで倒れていたり、排泄の失敗でシーツを何度も替えることも増えていきました。
「もうそろそろ施設入所では…」という声が上がり、会議も開かれました。
けれどAさんはにっこりと穏やかに笑い、
「あら、施設ってずいぶん急な話ね。私は大丈夫。だってなるようにしかならないでしょ。」
その言葉に背中を押されるように、
私たちは「どうにか自宅療養を続けられないか」と考え直しました。
支える仕組みづくり
定期巡回にはセンサーマットを導入し、訪問看護と往診は毎日対応。
ご家族も電話や記録を通じて毎日見守りに参加しました。
こうした体制のもと、最期まで自宅で過ごすことを、ご家族も決断されました。
「その人らしく」を支えるもの
「その人らしく」とは、
その人の歩んできた人生を理解して関わること(ソフト面)、
そしてICTやセンサーといった新しい技術(ハード面)の活用が大きな力になります。
介護保険制度が始まった頃にはなかった仕組みや道具によって、実現できることが増えてきました。
ソフトとハードがうまく融合し、チーム全員が同じ方向性で支援することで
初めて「その人らしく」が叶うのだと、Aさんの事例を通じて強く感じました。
まとめ
人生の最期の瞬間まで、その人らしく。
それは簡単ではありませんが、医療・介護・ご家族、そして新しい技術が一つになれば、
きっと実現できることだと信じています。




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